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むつみ先生奮闘記

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命の勉強?

昨日の夜、夫が、ヤゴがもうじき羽化しそうだ、と教えてくれました。昨年の夏、学校行事だったかボランティア主催だったか、家の近くの川で開かれた自然教室に参加した際に、息子の採って来たヤゴです。夏中には羽化するものだと思っていたのが越冬してしまい、ついにかれこれ1年も、息子の部屋で生息していたのでした。ふてぶてしいヤツで、死んだフリが上手なので、なんどもだまされそうになりました。私たちは『ヤゴおやじ』と呼んでいました。

今朝息子を起こす際に見たときには、ずっと岩や水草の下に隠れるように暮らしていたソイツが全身水面より上にでてきていて、背中の真ん中が盛り上がって裂けそうになっていました。とんぼのことなど何も知らない私にも、なるほどその時が近いのだなと感じられました。1年間を振り返り、ソイツがとんぼになって飛んだら、きっと感動だろうなぁと、ほとんどノータッチだった私ですが、思いました。

午後、掃除をしようと息子の部屋に入って、ひろがったオモチャを片付けていると、何かしら気配を感じました。その時までヤゴのことなどすっかり忘れていた私でしたが、はっとして近づくと・・・羽化したばかりのとんぼが水の中に落ちていました。一瞬、ここからまた岩をよじ登って飛ぶんだっけ?と錯覚して、しばし考えてしまいましたが、そんなわけはありません。あわてて水から救い上げてやりました。でももうほとんど動きませんでした。

1年も育てて来たのに、きっと息子はショックを受けるだろうと思いましたが、帰宅した息子にとんぼが溺れてしまったことを伝えたとき、以外にも息子は冷静でした。じっと黙って見つめたあと「死んでるん?」と尋ねました。「まだ多分生きているけど、きっともうじきだよ」と応えると、「ふーん」とうなづいて、遊び始めました。

夜、とんぼはまだ生きていました。水から出してやった直後よりは幾分活発に手足を動かしていましたが、かわいそうに羽がだめになってしまっていました。羽はびしょびしょに濡れた後、歪んだままからからに乾いてしまっていました。なんとか広がらないかしら?と、私が濡れコットンで湿らせて引き延ばそうとすると、いやがって逃げようとします。それを見ていた息子が、声を殺して嗚咽しはじめました。もう死んでしまっている、あるいは、ほとんど死んでいる状態にはあれほど無表情だったのに、今生きようとしているとんぼの姿は、彼の胸をうったようでした。

なだめて寝かしつけながら話しました。
ーたぶんこのとんぼは生きられへんねんよ。
ーーどして?
ー飛べないってことは、自分でエサを取れないってことやからね。
ーーエサをやったらええやん。
ー野生のものってのは、そんなんでは生きられへんねん。
ーー・・・・いつ死ぬん?(涙)
ー明日かもしれへんし、あさってかもしれへん。でもな、それまではきっと一生懸命生きてるねんから、じっと見守ってあげよう。
ーー・・・・うん・・・・

それから、他の動物も人間も産まれてくるときには命がけであること、そうやって危機一髪の過程を乗り越えて、命を与えられて、一生があるってこと、だから産まれて来た限り、どんなことがあってもがんばって生きていかなあかんってこと、生きたくても生きられない命もあるんだから、生きている自分の命は大切にしなくてはいけないってこと・・・・・などなど話しながら眠りにつきました。


追記:翌日息子が帰宅したらとんぼは死んでいたそうです。夫と二人で庭に埋めてやった、と話してくれました。
命の勉強?_b0058160_2245169.jpg

by horii-ent | 2009-06-17 22:14 | 息子
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堀井耳鼻咽喉科の女性医師の毎日を紹介


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