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むつみ先生奮闘記

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川上弘美「ざらざら」

花粉症まっさかりで、生活の大部分の時間を診察にあてて生きている私ですが、こういう時こそ、したいことをあきらめない主義です。ピアノもボイストレーニングもゆっくりゆっくり進行中。でもピアノ弾いたり発声練習したりするほどの時間は、休日にしか取れません。平日の小さな時間、寝る前の5分とか、一人でお弁当を食べている15分とか、そういう時間にはやっぱり読書が最適。

そんな私の読書にぴったりの本を読みました。川上弘美「ざらざら」_b0058160_1744576.jpg
短い小説が23編も入っている短編集です。ちょっとした時間で読めてしまうくらいの短編だから、私の小さな時間の楽しみに最適でした。

川上弘美さんは、最近ちょっと興味ある作家です。独特の雰囲気があります。すっとぼけたような調子、というか、柔らかく焦点をぼかしたような雰囲気、というか。どの小説もごくごく普通の、どこにでもいそうな人が出て来て、それは私かもしれない、と思えるようなお話です。読んでいると不思議な気持ちになります。懐かしいような、切ないような、甘酸っぱいような、静かに小さく哀しいような、こっそりひっそり嬉しいような、そっとくすっと笑ってしまうような、その後でちょっぴり涙目になってしまうような。

ちょっと前に凝っていた江國香織さんとはまったく違うかな。江國さんの主人公は、割とあか抜けたカッコいい人が多くて、憧れたり共感したりもするのだけど、実際にいて、隣に座っているかもしれない人という感じがあまりしない。それだから空想の世界を楽しめる、というのはありますけど。

川上弘美さんの主人公は、みんな私だよ、って言ってしまいそうな人たち。だからかな、不思議な気持ちになるのですね。

好きな本に出会った時、最後が近づくと寂しくなることありませんか?読み終わりたいような、終わりたくないような。読んでしまったら来る別れが辛い、って感じ。これはそんな本でした。
by horii-ent | 2012-03-17 23:18 | 映画、本
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堀井耳鼻咽喉科の女性医師の毎日を紹介


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